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地上げ屋 VS 地権者 地上げ攻防戦のリアル

前回ご紹介した地上げ屋達の攻防戦は大好評でした。今回はさらに実務を見ていきます。

 

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ある地方で工場用地を取得したい大企業がいたとします。その用地を確保するために、関西なら大阪、東北なら仙台、九州なら博多の中堅不動産会社がエージェントのように動くことがあります。そういう中堅不動産会社は子会社や関係会社をいくつか持っていて、その取引先や出資先の土建屋などに実質的な地上げを委託します。

 

 

土建屋には、土地を売らせるプロの「見切り屋」、土地を放り出させるプロの「立ち退き屋」、相続関係を壊して土地を売らせるプロの「崩し屋」など様々な役割を担うプロ達を雇っています。彼らがどのように地上げをするかご紹介します。

 

まず、土建屋というのがどういうポジションを地元で確立しているかを知っておく必要があります。そういう会社は地元の高校を中退・卒業した屈強な若者を雇っていて、少しグレたような後輩たちを常にリクルートしています。中古自動車販売会社や消防団員、ガソリンスタンドなど様々な職種で働いている人たちと横のつながりがあり、地元の情報を一瞬でかき集めることができるネットワークを構築できるからです。他に就職先もなく、たまには万引きなどの前科がある若者も好んで雇います。子会社などでは山奥のヤードで中古車の解体を通常はやっていたりします。

 

もう少しわかりやすく言うと、小説などで良家の一人娘に父親あいつだけには近づくなと警告しているのにもかかわらず、ふらふらっと恋心を抱いてしまうような地元のワルがいっぱいいるイメージです。

 

さて、そういう土建屋は地元では怖いもの知らずですが、中核都市の中堅不動産会社にだけは頭が上がりません。いつも仕事をもらっているからです。自分たちで仕事を作り出せるような環境はその地元にはないので仕事をもらうしかないのです。その中堅不動産会社が地上げをやれと言ってきました。断ることはできません。断ったり失敗したりしたら仕事が今後もらえないかもしれません。

 

 

悩む土建屋の社長は社員の中から前科がある若者と情報通の若者を社長室に呼び出します。情報通の若者には地上げ対象地の地主の情報をかき集めろと命令します。そのうえで、前科がある若者には地上げを任せることを告げ、高校時代の不良グループを集めさせて、チームを作らせます。

 

 

情報通の若者が集めてきた地主情報をもとに、社長自らが地上げの交渉に赴きます。副社長クラスにやらせることもありますが、平社員にはやらせません。下手だからです。そして、地上げに応じた地主をリストからはずしていくと、だいたい2割くらいの地主は地上げに応じない傾向があります。

 

 

その場合、グレたグループを活用して、地主が住んでいる家の傍で毎晩毎晩大騒ぎをさせるのです。嫌がらせをすることで地上げに応じさせるという「立ち退き屋」の役割を負わせるのです。毎晩眠れず疲労困憊した地主はとうとう地上げに応じるのです。

 

 

しかし1割の地主はそれでも応じません。そういった場合は、その地主の自宅前で工事を行い、土砂や砂利をわざとその自宅の中に流し込むのです。塀が壊れたり、門から出られなくなってもお構いなしです。「工事の手がすべっちゃって」と言って悪びれる様子はありません。そのうち、ゴミがたまり始めたり、自転車の不法投棄や動物の死体なども投げ込まれ始めたりします。不動産価値がどんどん下がっていくことを目の当たりにした地主はその土地を見限って出て行ってしまいます。これを「見切り屋」と言います。土建屋はわずかばかりの金でその土地を買い上げます。

 

 

ほとんどの場合はこの手法で地上げが成功するのですが、ごく稀にそれでも立ち退かない信念の強い地主がいます。こういった場合にはグレた青年集団と土建屋の社長が徒党を組んでその地主を誘拐して監禁します。権利書に無理やりハンコを押させたり、息子夫婦に親を説得させたりします。せまい田舎で誘拐事件が発生するなんて思ってもみないこと・噂がもともと悪い土建屋に関わるとろくなことがないと思わせることなど様々な方法を駆使して、ハンコを押させます。狭い田舎なので裁判のような荒い方法に訴え出ることも憚られるという点を巧妙に攻めるのです。

 

もちろんこのような犯罪行為は言語道断ですが、中堅不動産会社はこのようなことが起きているとは知らない善意の第三者であり、土建屋もお金をきちんと払って土地を取得しているので、外見では通常の売買が行われたと見られます。

 

 

このようにして、地主⇒土建屋⇒中堅不動産会社⇒大企業と土地は転々と移転し、工場用地として利用され、地域経済を潤すのです。

 

 

もちろん、土建屋は逮捕されることもあります。不法な地上げは許されません。しかしまだまだ横行しているのも事実なのです。

 

http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/const/kengyo/collaboration/cgi-bin/companydetail.cgi?DocumentNo=20141107123001