ICOした会社は、株式市場へIPOできないのか?の答え
これ、詳しい方からぜひ反論いただきたいです。 https://t.co/2bx6xKy88p
— 有安 伸宏 (@ariyasu) 2017年9月2日
「ICOした会社は、株式市場へIPOできないのか?」の答えはまだ誰も知らない。これから事例ができていく。「ICOしたら、既存の資本市場とは別の世界、向こうの世界で生きていく覚悟が必要っぽいなー」と漠然と考えていたが、それは今後の先行者の動き、東証の動き次第。USは相当厳しそう
— 有安 伸宏 (@ariyasu) 2017年9月2日
ICOについてツイッターをたまたま見ていたらこんあツイートを発見しました。この論点は金商法をある程度理解してないとよくわからないまま終わってしまいます。このツイートの答えは「上場できる。が、必要ない。」が正解です。
仮想通貨はビットコイン、イーサ、ライトコインを購入。最近の相場上昇で投資金を大きく上回り、毎日チャートを見るのが楽しみ。
Walletも複数持っていて、ICOで複数社のトークンを購入し、常にICOする企業・団体の情報収集。エンジニアではないので技術関係はそこまでではないものの、HTMLとPHPは触ったことがあるので結構興味あり、周りのエンジニアからは、既存のプログラミングとは少し違う「世界共通のルール・」考え方」で記述することが理解できれば普通のエンジニアでも難しくないらしい。
fudousandokuritsu.hatenablog.com
不動産業界では、不動産の建物や土地を扱い以外にも金融スキーム関係に携わっていたのでいわゆる不動産流動化とか証券化もやったことがあります。そのうえで、仮想通貨に詳しいアンダーソン毛利友常法律事務所の河合先生のセミナーなどを参考にするとトークンの扱いは以下の分類によってことなると考えます。
トークンの分類:
ICOの目的はこの4つのうちどれかに該当します。
①利用券型(開発されたサービスの対価として授与される。使うとトークンが減る)
②優待券付会員権型(トークンを消費せずにサービスを受けられる)
⇒ファンクラブの会員権の類
③暗号通貨型(価値の保存、送金決済手段)
⇒ビットコイン、ライトコインの類
⇒DAOのように事業資金をトークンで集めて、事業収益をトークン所有者に配当するもの
トークンに対する法規制と会計処理
①はプリペイドカードのように前払い式支払い手段発行者に対する規制があるだけで、届け出や所管官庁への報告義務などを果たせばよいだけでIPOには何ら影響はありません。プリペイドカードを発行している企業がIPOできないなんてルールはありません。前受け金として負債計上します。
②も同様で、トークンが不特定多数相手に売買できない限り(トークンが上場しない限り)、消費者契約法や特定商取引法など一般的な法律の適用を受けるだけでIPOには影響しません。トークン発行時に売上として会計上は計上されます。
③は、そのトークンが仮想通貨かどうかを判断しないといけません。トークンが上場して不特定多数相手に売買できるようになるといわゆる2号仮想通貨に該当し、資金決済法の適用を受けます。つまり、取引所(仮想通貨交換業)の登録が必要になります。しかし、取引所にトークンを代わりに売買させてもらえれば資金決済法はクリアできます。これも売上計上。トークンという製品を販売したことになります。電子書籍のようなものです。
仮想通貨法の内容をわかりやすく説明します! | | TRENDERS NET
④は金融商品取引法の対象となり(まだ明確に法規定されてませんがみなし有価証券として該当する可能性が極めて高い)、いわゆる2種免許を取得している金融業者に私募取業務を委託することになります。トークン発行者が2種金融業者に私募取業務を委託して、投資者に重要事項説明をし、2種金融業者は一定の期間で金融当局に届け出などをします。帳簿の保存義務なども2種金融業者には発生します。不動産流動化の私募取経験から言うとだいたいこの私募取業務の費用は300~500万円程度です。
持ち分の性質にもよりますが社債か劣後株的な形で負債・資本計上します。返済義務がないこと・議決権がないことから匿名組合出資のようなものと個人的には考えます。
つまり、プリペイドカードを発行し、会員権を売り、「トークン」という製品を売り、ときどき劣後株を発行している企業がIPOできるのかという問いかけに言い換えられることができます。
よく考えると、こんな会社は山ほど存在します。SUICAというプリペイドカードをJRは発行していますし、リゾートトラストはリゾート会員権を販売しているし、メーカーは様々な製品(電子書籍なども)を販売していますし、劣後株を発行している上場企業もたくさんあります(コスモイニシア)。
逆に、IPOした会社はICOできるのか?も考えてみましょう。
実は、上場企業のプレミアムウォーターという会社がICOで資金調達することを計画しています。市場でも好感されて株価はストップ高になっています。
つまりここまでを整理すると、
ICOした会社はIPOできるし、IPOした会社もICOできる。
では、さらにつっこんで、ICOした会社がIPOする必要があるのか?を考えてみましょう。
IPOの必要性
IPOとは一般的には東証などに自社の株式を上場させて投資家(機関・個人)から資金を調達し、さらなる成長を目指すためのものです。企業がさらに成長すると思われれば株は買われて株価は上がり、成長しなくなると思われれば株は売られて安くなります。
借金は返済義務がありますが、株での調達は返済義務はありません。倒産しても株主は債権者に劣後して残余財産の分配を受けるデメリットがありますが(株主責任とはこのことです)、会社が成長すれば株価があがるので出資した額よりも高い値段で株を売ることができるかもしれません。債権者が金利以外のうまみが無いのに対して、株主にはこうしたうまみがあります。
成長のために資金を調達することがIPOの目的です。しかしIPOしなくても資金を調達できるとしたらどうでしょう?さらに、東証などに上場すると適時開示や金融商品取引法などの規制やIR活動など様々なコストがかかります。四半期決算もしないといけません。上場しているだけで数千万円以上のコストがかかると言われています。そういうことができる人材も雇わないといけません。上場しなければ決算は一年に一度です。そんなに難しい規制もうけません。企業経営に集中できます。上場しないことを選ぶ大企業もおおいのです。サントリーや竹中工務店、イトーヨーカ堂などは非上場として有名です。このような会社は株式での資金調達よりも銀行からの借り入れが多いようです。
しかしICOという新しいテクノロジーを活用して、返済不要の資金をしかも多額の資金を緩い規制で調達できるとしたら、経営者としては魅力的なものに映るはずです。そのトークンを購入した投資家も、そのトークンが上場して売買できるようになれば、会社が東証にIPOしていようがいまいが関係ありません。投資資金をいつでも回収できるようになるからです。こうして考えると、ICOした企業が東証などに上場する必要性は非常に弱く、むしろ自社のトークンを仮想通貨取引所に上場できるようにすることのほうに強くインセンティブが働く(トークンに投資してくれた人のEXIT確保のため)気がします。