28歳満点宅建士が不動産会社を開業する実況中継

宅建実務試験満点の宅建士がインターネット不動産会社を起業!

なぜ経営が傾くと不動産を売却するのか?

神戸製鋼でデータ偽装が発覚し株式市場ももとより顧客企業でも製品の強度に関する調査が進んでいます。

 

神戸製鋼から原料を仕入れた自動車会社や重工メーカーは100社を超えており、場合によっては強度不足として損害賠償訴訟を起こされる可能性もあります。神戸製鋼としては会社のホームページで強度への影響はあまりないという認識を示していますが、損害賠償訴訟による潜在的債務と、それへの対応に必要な弁護士費用の2つが神戸製鋼を苦しめそうです。

 

そんな中で、地元神戸新聞が、神戸製鋼が子会社の不動産会社を売却するという観測記事をリリースしています。神戸製鋼は否定していましたが、金額の規模は数百億円程度だそうです。

 

www.kobe-np.co.jp

 

神戸製鋼所神戸市中央区)が、子会社の神鋼不動産(同)の株式を売却する方針を固めたことが11日、分かった。アルミ製品のデータ改ざん問題で、自動車のリコール(無料の回収・修理)などに発展する恐れがあり、資産売却を進める。他に売却できる資産のリストアップも進める。

神鋼不動産は、1959年に太平ビルディングとして設立し、63年神鋼興産に名称変更。2002年に神鋼と合併し、05年に神鋼不動産として独立した。マンションブランド「ジークレフ」で知られる。神戸・阪神間を中心に事業展開し、17年3月期の売上高は190億円。純利益は25億円。

 純利益が25億円なのでPER20倍で計算すれば資産規模は500億円程度に上ると考えられます。

 

 

そういえば業績が悪化した東芝も不動産子会社を売却しています。2008年のリーマンショックのときと2015年の不正会計の時期に2段階に分けて売却しています。

 

jp.reuters.com

 

東芝 は17日、持分法適用の不動産会社、NREG東芝不動産(東京都港区)の株式30%を野村不動産ホールディングス に売却することで合意したと発表した。資産の効率化と財務体質の改善を図る。9月30日付で売却する予定。売却額は370億円。売却益は249億円で、2015年7―9月期に営業外収益に「その他利益」として計上する。

 

www.nikkei.com

 野村不HDは2008年、東芝傘下の東芝不動産(現NREG東芝不動産)株の65%を取得。15年に追加取得し、今は発行済み株式の95%を保有している。

 東芝野村不動産に支払っている賃料は年20億円ほど。

 

経営が傾いたシャープも自社ビルを売却しています。

 

 

www.nikkei.com

 

 

 シャープは28日、大阪市内にある本社ビルと向かいの建物をニトリホールディングス傘下のニトリなどに売却すると発表した。2016年1~3月期の連結決算で148億円の売却益を特別利益として計上する。主力の液晶事業が低迷しているシャープは固定費の削減を進めており、早期の経営再建を目指す。

 売却の対象は本社ビル(土地面積7370平方メートル)と液晶事業部門が入る田辺ビル(同1万812平方メートル)。本社ビルはニトリ、田辺ビルはNTTグループの不動産会社のNTT都市開発に16年3月18日付で売却する。それぞれ商業施設、高層マンションになるとみられる。

 

 

東芝神戸製鋼、シャープなど日本の名だたる企業の経営が傾いてしまうことがそもそも不思議ですが、なぜそろいもそろって不動産を売却するのでしょうか?

 

 

経営が傾くというのは売上が減ったり、財務的に巨大な債務を負ったりするために発生します。売上が減ったら売上を増やす努力をすればいいのですが、財務的な基盤に傷がつく場合は売上を上げても追いつかない可能性があります。ある日突然1000億円の債務を負ったとしても、すぐに売上を1000億上げることはできませんし、それだけでは解決できる話ではないからです。

 

 

東芝神戸製鋼もそうですが、巨額の債務を負うことになるという共通点があります。自社に責任があることで他社に損害を与えた場合は損害賠償訴訟が発生しうるのです。裁判になって2000億払えと言われたら払わないといけません。その裁判費用も自腹です。優秀な弁護士を雇って防衛しようとしても防衛しきれず、優秀な弁護士は単価が高いので裁判費用は巨額になります。

 

すると何よりも大事になってくるのが現金です。通常は手元現金はあまり多くありませんが、このような債務を負うことが予見されるときは手元現金を用意しておく必要があります。裁判費用や損害賠償は現金で支払うからです。

 

 

そのため、企業は保有している資産を現金化しようとします。

 

すぐに現金化できるものには何があるでしょうか?

 

保有している上場企業の株、売掛金短期貸付金、不動産などなどでしょう。

上場株は価格変動があるので必ずしも欲しい金額が手に入るとは限らない。売掛金も相手次第なので確実性が低い。短期貸付金も相手が返してくれない限り返ってこない。

 

 

そんな中で、すぐに現金化できてある程度まとまった資産といえば・・・

 

 

そうです、不動産なんです。

 

 

特に日本企業は国内経済の成長が弱く、工場などの設備に投資するよりも不動産に投資したほうが安全という考えの企業が多いため、本業に関係なく不動産を大量に持っていたりします。

 

電機メーカーの東芝やシャープも不動産を所有しているのはこのためです。

 

 

そして、もう一つ、セールス&リースバックという契約方法があります。

 

自分が保有していた不動産を売却したあとに、その売却先と賃貸契約を結ぶ方法です。自社ビルなどを持っていた企業がそのまま入居を続けたいと考える場合にこの方法が用いられます。不動産を買収した側から見れば、すぐに賃貸人が見つかるため安心して買収できますし、売却する側からすれば面倒な引っ越しをせずに済みます。

 

 

さらにこのセールス&リースバックのメリットは税金負担が減る効果もあります。不動産は所有しているだけで固定資産税がかかりますがそれを払わなくてよくなるのです。

 

 

一時的ですが、売却したためまとまった現金が入ってくること、固定資産税がなくなること、などで当分の現金を確保することができるのです。

 

このため現金や運転資金を確保したい企業は不動産を売るのです。