28歳満点宅建士が不動産会社を開業する実況中継

宅建実務試験満点の宅建士がインターネット不動産会社を起業!

原野商法とは 昭和の不動産詐欺の手口

バブル経済まっさかりの1970年代から80年代にかけて、原野商法という不動産詐欺が横行していました。

 

 

北海道のど真ん中の何もない原野が不動産詐欺の舞台です。

 

 

人里離れた、駅も道路もない土地をあなたならどう売るでしょうか?詐欺師たちの仰天必至な詐欺の手口をご紹介します。

 

 

何もない土地を売るためにはその土地に価値があると思い込ませるところから始まります。何もない土地に与えることができる価値とは「将来の期待」であることが多いです。例えば、高速道路の収用対象地になっているとか北海道新幹線の線路用地になっているとかそういう虚偽なことでもいいのです。

 

 

しかし、本当に北海道のど真ん中に高速道路や新幹線が通るのかと疑問に思われるのは当然です。詐欺師たちはその虚偽をいかに真実だと思わせるかに全てを集中します。夢物語を現実と思わせるのが詐欺師の手口なのです。

 

例えば北海道の原野が緑の土地だとします。しかしこのままでは売れません。

 

f:id:fudousankaigyou:20170907220522j:plain

 

この土地を赤線と黒線で引いたように土地の区割りを作るのです。これを分筆といいます。土地の1区画のことを1筆と言います。区画を分けることを分筆と専門用語で言います。もともと緑で1筆だったのを21筆に詐欺師たちは分筆するのです。

f:id:fudousankaigyou:20170907220715j:plain

 

 

そして黒い2本の線で囲まれた真ん中の土地が将来新幹線の線路用地になる予定だと虚偽の勧誘をするのです。北海道のど真ん中の原野で確かにきれいに直線で引かれた境界線を見て、一瞬本当かもしれないと思わせるのです。

 

一般には公開されていないここだけの話として地元の役場や有力者、政治家が極秘に区画整理を進めJRを秘密裏に交渉していたという裏話もそっとささやきます。そのため表立って役場に確認しても答えてはくれないと言い含めます。

 

しかし、これだけでは不動産詐欺の対象にされたカモの個人投資家は騙されません。そこでさらに詐欺師たちはこう言います。

「実は①と②と③の土地は、北海道出身の演歌歌手の◎◎△△さんがご購入されているのですよ」

そして実際の①②③の登記簿をカモの個人投資家に見せるのです。そこには確かに演歌歌手の名前が所有権登記されていました。どうやらこの登記簿は本物のようです。

 

しかし、本当は詐欺師たちはその演歌歌手と同姓同名の人間を用意して所有権登記をしているだけというカラクリがあります。本腰を入れている詐欺師の中には、本物の演歌歌手に自然保護団体を名乗って、北海道の豊かな自然が破壊されないよう乱開発を防ぐべく、自然保護に関心のある有名人や演歌歌手に陳情して、応じてくれた歌手にその土地を格安または無償で譲渡して登記の名義だけを取得するという凄技をやってのける人達もいます。

 

 

少なくとも個人投資家たちは地元出身の有名人も不動産投資をしているのだという事実を知り、有名人であれば筋のいい投資話であるに違いないと思い込み、すっかり新幹線建設計画を信じてしまうのです。

 

 

さらに詐欺師たちの追い込みは続きます。

 

 

土地を買う場合は④⑤⑥の3筆はセットで買ってくれとささやくのです。本来であれば新幹線用地の⑤だけで充分で、④と⑥は不要なのですが、それには事情があると伏し目がちに説明します。実は④と⑤と⑥はそれぞれ3兄弟が所有していて、父から譲り受けた土地を3分割したもので、次男だけに得をさせる訳にはいかないと説明するのです。新幹線用地の取得に際して長男が周辺住民を説得して同意を取りまとめ、三男が病気がちで働けず、長男の苦労や三男の治療代のためにも必ず④⑤⑥はセットで買ってほしいという売買条件を提示するのです。

 

 

もちろん、詐欺師としては当初ひとまとまりだった原野を残さず処分してしまいたいという目論見があり、詐欺の材料にするために21分割をしたのでどうしても新幹線用地には該当しない土地が出てしまうのですがそこもセットで一掃したいと考えているのです。

 

 

④⑤⑥の土地の合計金額は1500万円だけれども、セットで買ってくれたら1000万円でいいと値引きもすかさず提示します。

 

 

それでもごねる客には、⑦⑧⑨はすでに商談が開始されていてすぐに売れそう、その客が④⑤⑥にも興味を示しているが、あなたのためにまだ取っておくことができる、でも早く決めてくれないなら、⑦⑧⑨を買ってくれる人に④⑤⑥も紹介しようと思っているとせかします。

 

 

 

分筆登記、有名人の登記簿、値引き、せかしの4点セットがそろい、しかも時代はバブル真っ盛りで土地の値段が上がっており、自分の周りには徐々に不動産で一儲けした投資家が出てきている時代です。自分もなんとしても一発当てたいと思ってしまう人がでてきても不思議ではありません。

 

ここまでくると100人のうち2~3人は騙されて買ってしまうのです。

 

そして、買ったが最後、北海道新幹線計画はその後40年以上実現せず、ようやく実現するころには他の土地を通過する計画であることが発覚します。しかしそのころには詐欺師たちには連絡がつかず、何にも使えない土地だけが投資家の手元に残るのです。