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不動産小説シリーズ① 「成算あり」城山三郎

不動産業界をテーマにした小説本を紹介するシリーズ、第一弾は、「官僚たちの夏」や「落日燃ゆ」で有名な城山三郎さん著「成算あり」です。

 

 

成算あり (角川文庫 緑 310-10)

成算あり (角川文庫 緑 310-10)

 

 

書評

非常に読みやすい文章、ただし話に山場が無い。淡々と読める文体。主人公が未知の不動産業界に足を踏み入れ、手痛い失敗や不動産業界の闇を経験しながら、圧倒的な力量をもつ不動産会社社長に弟子入りし、不動産を安く買う方法、不動産業で失敗しない経営哲学を学んでいくという内容。読者も主人公と同じ目線で不動産業界に入っていく疑似体験ができる。但し、昭和40年代~50年代の不動産業界の話のため2000年代に役に立つ知識かは不明。

 

 

内容

 

主人公の老田は母と腹違いの妹の3人暮らし。婚約者がいる青年で、夜間学校に通いながら昼は商社で働いています。ある日、小さな自宅の前に巨大なアパートが建設されます。

 

 

弱い立場から脱するために老田は力を得たいと考えるようになります。世の中を這い上がるための力です。

 

 

日照権を求めてアパートの施工主や建築会社と揉めているうちに、そのアパートの施工主の1人で不動産会社社長の桐山にどことなく魅せられていきます。桐山が力を持っていると理解したのです。

 

 

老田はもともと独立することを考えていたため、商社をやめていったんその桐山の会社に就職することにし、桐山から様々なものを吸収しようとします。副業として自分でもレンタルオフィス事業などを経営していきます。レンタルオフィス経営の中で様々なトラブルに遭い、その過程の中で桐山との会話から独特の経営哲学を学んでいきます。

 

 

「貧乏するのは、社会とか政治が悪いというより、つまりは、その人に何か欠けるところがあるからですよ。努力をしないか、頭を使わないか、病気で動けないか、何か必ず、その人がしない原因があるものです」と桐山。それ以外にも

「わたしが忠告できるのはひとつだけ、客に情をかけるなということです。それが鉄則です。」

「わたしは、不動産は全財産の十分の一にとどめておけという方針です」

「わたしがお客さまのためを思って言っていることがわかれば、お客はわたしを信用してくれます。安心して、また次の仕事を持って来て下さるのです。有難いことですよ」

 

と、桐山の冷めた不動産業界への思想と、好条件の物件を買いたたいていく術を目の当たりにします。あくまでも引きの姿勢で、のめり込まず、という具合です。

 

こういった桐山との会話から少しずつ、経営哲学を主人公が学んでいく小説です。